近年、日本で暮らす外国ルーツの子どもたちが増えています。学童保育にも、日本語がほとんど話せない子どもが入所することは珍しくありません。
初めてそのような子どもを受け入れる先生は、「どう接したらいいのだろう」「困らせてしまわないだろうか」と不安になるかもしれません。しかし大切なのは、完璧な日本語指導をすることではなく、「ここは安心できる場所だ」と感じてもらうことです。
今回は、日本語を話せない子どもが学童に来たときの対応のヒントをご紹介します。
まずは「安心できる場所」をつくる
言葉が通じない環境に入ることは、大人が海外へ行く以上に子どもにとって大きな不安です。
周囲で何を話しているのか分からない。
何をすればいいのか分からない。
困っても助けを求められない。
そんな状態で過ごしていることを理解する必要があります。
まずは日本語を覚えさせようと焦るのではなく、
「大丈夫だよ」
「一緒にやろうね」
という安心感を伝えることが最優先です。
笑顔で迎えたり、隣に座ったり、一緒に遊んだりするだけでも子どもの緊張は和らぎます。
絵カードや写真カードを準備する
言葉が通じなくても、視覚的な情報は理解しやすいものです。
例えば、
- トイレ
- 水を飲む
- おやつ
- 帰る
- 宿題
- 遊ぶ
- 片付け
などをイラストや写真で示したカードを用意しておくと便利です。
子ども自身が指差しで意思表示できるようになります。
また、
- お腹がすいた
- 気分が悪い
- 休みたい
- 困っている
などの気持ちカードもあると安心です。
言葉がなくてもコミュニケーションが取れる環境を整えましょう。
翻訳機や翻訳アプリを活用する
今は便利な翻訳ツールがたくさんあります。
スマートフォンの翻訳アプリや翻訳機を活用することで、簡単な会話は十分可能です。
例えば、
「トイレに行きたいですか?」
「おやつを食べますか?」
「今日は楽しかったですか?」
などの日常会話であれば、翻訳機が大きな助けになります。
ただし、翻訳機に頼りすぎる必要はありません。
大切なのは正確な翻訳よりも、「あなたと話したい」という気持ちを伝えることです。
身振り手振りを交えながら使うと、より伝わりやすくなります。
少しずつ日本語に触れさせる
日本語を覚えてもらおうとして、最初からたくさん教える必要はありません。
まずは生活の中でよく使う言葉から始めます。
例えば、
- おはよう
- こんにちは
- ありがとう
- はい
- いいえ
- またね
などです。
先生や周りの子どもたちが毎日繰り返し使うことで、自然と覚えていきます。
無理に話させようとすると負担になります。聞くだけでも十分です。
日本語を「勉強」としてではなく、「楽しい遊びの中で触れるもの」として経験できるとよいでしょう。
その子の母語や文化を知る
受け入れる先生側も、その子について知ろうとする姿勢が大切です。
どこの国から来たのか。
どんな言葉を話すのか。
どんな食べ物が好きなのか。
どんな遊びをしていたのか。
少し調べるだけでも理解が深まります。
例えば、その国のあいさつを一言覚えて伝えるだけでも、子どもはとても嬉しく感じます。
「先生は自分のことを知ろうとしてくれている」そう感じられるからです。
また、その国の文化や習慣を理解することで、誤解やトラブルを防ぐことにもつながります。
その子の国の動画や音楽を見てみる
子どもが好きなアニメや歌、動画などを一緒に見てみるのも効果的です。
言葉は分からなくても、「これ好きなの?」「面白いね」と共感することで関係が深まります。先生自身がその子の世界に興味を持つことが大切です。
子どもにとっては、自分の文化を認めてもらえる経験になります。それは自己肯定感にもつながっていきます。
周りの子どもたちに理解してもらう
実は一番大切なのは、周りの子どもたちへの働きかけかもしれません。
日本語が話せない子どもを見て、「何を言っているか分からない」「一緒に遊べない」と感じる子もいます。
そこで先生が、
「言葉は違うけれど、みんなと同じ友達だよ」
「困っていたら助けてあげようね」
と伝えることが大切です。
子どもたちは大人が思う以上に柔軟です。
遊びを通して自然に関わり始めることも少なくありません。ボール遊びや鬼ごっこ、ブロック遊びなどは言葉が少なくても一緒に楽しめます。
友達との関わりこそ、日本語習得の大きな力になります。
間違いを責めない
日本語を覚える過程では、たくさんの間違いがあります。
発音が違う。
言葉の順番が違う。
意味を勘違いする。
それは当然のことです。
間違いを指摘するよりも、「伝えようとしてくれてありがとう」という姿勢を大切にしましょう。安心して話せる環境があれば、子どもは少しずつ言葉を身につけていきます。
まとめ
日本語を話せない子どもへの支援で最も大切なのは、「日本語を教えること」ではなく、「安心して過ごせる居場所をつくること」です。
そのために、
- 絵カードや写真カードを準備する
- 翻訳機や翻訳アプリを活用する
- 少しずつ日本語に触れさせる
- その子の母語や文化を知る
- 動画や音楽を通して理解を深める
- 周りの子どもたちに理解を促す
- 間違いを責めず挑戦を認める
といった工夫が役立ちます。
言葉が違っても、子どもたちは遊びや笑顔を通してつながることができます。学童は、子どもが「ここに来てよかった」と思える場所でありたいものです。そのために、まずは先生自身がその子を温かく受け入れることから始めてみましょう。



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