JLPT N3は、多くの学習者にとって大きな壁です。
N5・N4では、
- です
- ます
- て形
- ない形
など、基本的な文法を学びます。
しかしN3になると、
- ~ようになる
- ~たところ
- ~てしまう
- ~ことになる
- ~ばかり
- ~みたい
- ~ために
など、似ている表現が一気に増えてきます。
そのため学生から、
「先生、違いが分かりません」
「全部同じに見えます」
という声がよく聞かれます。
N3指導で大切なのは、文法の意味を説明することではなく、「どんな場面で使うか」を理解させることです。
N3で最も大切な考え方
新人教師はよく、「~ようになる=変化」と説明します。
もちろん間違いではありません。
しかし学生は、「変化って何ですか?」となります。
そこで実際の生活から入ります。
例:「~ようになる」
教師:「みなさん、日本へ来たばかりの時、納豆を食べられましたか?」
学生A:「いいえ。」
教師:「今は?」
学生A:「食べられます。」
教師:「そうですね。」
板書
納豆が食べられるようになりました。
学生:「あー!」
教師:「前はできなかった。でも今はできる。」
学生:「分かります。」
この方がずっと理解しやすくなります。
学習者とのやり取り①
教師:「前は漢字が読めませんでした。」
学生:「はい。」
教師:「今はどうですか?」
学生:「読めます。」
教師:「じゃあ?」
学生:「漢字が読めるようになりました。」
教師:「完璧です。」
学生自身の経験を使うと定着率が上がります。
「ことになる」との違い
N3でよく出る質問です。
教師:「来月、日本へ行きます。」
学生:「はい。」
教師:「自分で決めました。」
学生:「はい。」
教師:「これは?」
学生:「日本へ行くことにしました。」
教師:「会社が決めました。」
学生:「あ!」
教師:「日本へ行くことになりました。」
ここで説明します。
ことにする
自分が決める
ことになる
他の人や状況が決める
この対比は非常に重要です。
イラストや写真を活用する
N3になると抽象的な説明が増えます。だからこそ視覚教材が効果的です。
例えば、「~そうです」を教える場合。
ケーキの写真を見せます。
教師:「このケーキを食べましたか?」
学生:「いいえ。」
教師:「どう思いますか?」
学生:「おいしそうです。」
教師:「なぜですか?」
学生:「見たからです。」
教師:「そうです。」
説明よりも写真の方が早いのです。
「~てしまう」の教え方
多くの学生は、「finish」と覚えてしまいます。しかしN3では感情も大切です。
教師:「スマホを落としました。」
学生:「大変です。」
教師:「スマホを落としてしまいました。」
学生:「あー。」
教師:「残念な気持ちがあります。」
次に、
教師:「宿題が終わりました。」
学生:「はい。」
教師:「宿題をしてしまいました。」
学生:「全部終わりました。」
教師:「そうです。」
意味が2つあることを場面で理解させます。
ロールプレイを増やす
N3では会話練習が非常に効果的です。
テーマ:アルバイト
学生A:「店長、来月国へ帰ります。」
学生B:「そうですか。」
学生A:「仕事をやめることになりました。」
学生B:「寂しいですね。」
テーマ:日本生活
学生A:「日本の生活はどうですか?」
学生B:「最初は大変でした。」
学生A:「今は?」
学生B:「だんだん慣れるようになりました。」
実際に使うと文法が生きてきます。
N3学生が苦手な「ばかり」
実はN3学習者は、
- ~ばかり
- ~だけ
- ~しか
をよく混同します。
教師:「昨日からラーメンばかり食べています。」
学生:「たくさん食べています。」
教師:「そうです。」
教師:「毎日ラーメンです。」
学生:「あまりよくないですね。」
教師:「そのイメージです。」
N3では感覚的な理解も大切です。
間違いを恐れさせない
N3は会話力が大きく伸びる時期です。しかし学生は間違いを恐れます。
例えば、
学生:「日本語が話すようになりました。」
教師:「惜しいですね。」
学生:「あっ。」
教師:「話せるようになりました。」
学生:「なるほど。」
すぐに否定するのではなく、「惜しい」「あと少し」という姿勢が大切です。
試験対策だけでは足りない
N3クラスでは問題集ばかり使いがちです。
もちろん試験対策も必要です。
しかし、「この文法を使って自分の話をする」時間を必ず作りましょう。
例えば、
~ようになる
「日本に来てできるようになったこと」
~てしまう
「失敗した経験」
~ことになる
「急に決まったこと」
こうしたテーマなら学生も話しやすくなります。
まとめ
N3文法を教えるときのポイントは次の5つです。
① 文法説明より場面から入る
② 学生自身の経験を使う
③ 写真やイラストを活用する
④ ロールプレイを多くする
⑤ 試験対策だけで終わらせない
N3は「知っている日本語」を「使える日本語」に変える段階です。
教師が長く説明する授業よりも、学生が話す時間が多い授業のほうが効果的です。
文法を覚えさせるのではなく、「この場面ならこの文法を使うんだ」と気づかせること。それがN3指導成功の最大のコツです。

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