N3レベルになると、学生は文法の意味は理解できても、実際の会話で使えないことが増えてきます。
その代表例が「~てみる」です。
教科書には、
「試しに~する」
と書いてあります。
しかし、この説明だけでは学生は使えるようになりません。
例えば、
- 食べてみる
- 行ってみる
- やってみる
- 着てみる
なぜ「みる」を使うのか、感覚がつかめないのです。
今回はN3クラスでよく扱う「~てみる」の教え方をご紹介します。
まず意味を説明しない
授業の最初から、
「~てみるは試しに行動する意味です」
と言う必要はありません。
まず場面を作ります。
教師:
「みなさん、納豆を食べたことがありますか?」
学生A:
「あります。」
学生B:
「ありません。」
教師:
「Bさん、どうして食べませんか?」
学生B:
「少し怖いです。」
(クラス笑)
教師:
「じゃあ、一回食べますか?」
学生B:
「はい。」
教師:
「その時、日本語では?」
学生:
「食べます?」
教師:
「もっと自然な言い方があります。」
板書
納豆を食べてみます。
ここで初めて文型を紹介します。
学習者とのやり取り①
教師:
「富士山に登ったことがありますか?」
学生:
「ありません。」
教師:
「登りたいですか?」
学生:
「はい。」
教師:
「じゃあ?」
学生:
「富士山に登ります。」
教師:
「もちろんそれでもいいです。」
教師:
「でも、経験として挑戦する感じなら?」
学生:
「登ってみます。」
教師:
「その通り!」
学生は「挑戦」のイメージを持ち始めます。
実物を使うと理解が早い
私は授業でよくお菓子を使います。
教師:
「これ、日本のお菓子です。」
学生:
「何ですか?」
教師:
「食べてください。」
学生:
(食べる)
教師:
「どうですか?」
学生:
「おいしいです。」
教師:
「みなさん、まだ食べていない人は?」
学生:
「食べてみたいです。」
実際に体験すると文法が生きます。
「~てみる」と「~ようと思う」の違い
N3でよく出る質問です。
教師:
「来年、日本へ行こうと思います。」
学生:
「はい。」
教師:
「これは計画です。」
教師:
「ちょっと日本へ行ってみたいです。」
学生:
「あ!」
教師:
「経験したい気持ちがあります。」
板書
~ようと思う
計画
~てみる
経験・挑戦
この違いを整理すると理解しやすくなります。
ロールプレイで定着させる
文法説明の後は必ず会話練習を入れます。
学生A:
「おすすめの日本料理はありますか?」
学生B:
「お好み焼きです。」
学生A:
「食べたことがありません。」
学生B:
「ぜひ食べてみてください。」
学生A:
「日本で何をしたいですか?」
学生B:
「温泉に入ってみたいです。」
N3では実際に口から出す練習が重要です。
学習者が間違えやすいポイント
よくある誤用です。
学生:
「昨日、納豆を食べてみました。」
教師:
「いいですね。」
学生:
「毎日納豆を食べてみます。」
教師:
「少し変ですね。」
「~てみる」は新しい経験や試しにする時に使います。
毎日の習慣にはあまり使いません。
教師:
「毎日食べます。」
〇
教師:
「一回試します。」
〇 食べてみます
この違いも教えましょう。
N3は「自分の話」をさせる
文法練習で最も効果があるのは、自分の経験を話すことです。
教師:
「日本でやってみたいことを3つ書いてください。」
学生:
「北海道へ行ってみたいです。」
学生:
「着物を着てみたいです。」
学生:
「相撲を見てみたいです。」
自分と関係がある内容は忘れにくくなります。
授業が盛り上がる質問
次の質問はどの国の学生にも人気です。
教師:
「もし100万円あったら何をしてみたいですか?」
学生:
「世界旅行をしてみたいです。」
学生:
「車を買ってみたいです。」
学生:
「高い寿司を食べてみたいです。」
文法練習なのに会話が盛り上がります。
N3教師が意識したいこと
N3では、
N5・N4
↓
文法を理解する
N3
↓
文法を使う
へ移行します。
そのため教師が話す時間を減らし、学生が話す時間を増やすことが重要です。
文法説明を10分続けるより、
「あなたは何をしてみたいですか?」
と質問した方が学習効果は高くなります。
まとめ
「~てみる」を教えるときのポイントは、
- 意味から入らない
- 経験や挑戦の場面を作る
- 実物や写真を使う
- ロールプレイを行う
- 自分の話をさせる
ことです。
N3の学習者は、「文法の知識」を増やす段階から、「自分の言葉として使う」段階へ進んでいます。
だからこそ教師は説明者ではなく、会話を引き出すファシリテーターになることが求められます。
学生が「食べてみたい!」「行ってみたい!」「やってみたい!」と自然に言い始めたら、その授業は成功です。

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