日本語教師として教え始めると、多くの学習者から質問される文法があります。その一つが「ように」と「ために」です。
どちらも目的を表す表現なので、学習者からすると
- 日本語が上手になるように勉強しています。
- 日本語が上手になるために勉強しています。
の違いがわかりにくいのです。
実際、新人教師の中にも「何となく使い分けているけれど、うまく説明できない」という方は少なくありません。
今回は「ように」と「ために」の違いを、授業でそのまま使える説明例とともに紹介します。
まず知っておきたいこと
「ように」と「ために」は、どちらも「目的」を表します。
例えば、
* 合格するために勉強します。
* 合格できるように勉強します。
どちらも「勉強する目的」を表しています。
しかし、この二つは全く同じではありません。
一言でいうと、
**「ために」は意志的な目標、**
**「ように」は能力や状態の変化を表します。**
これが基本的な違いです。
「ために」の使い方
「ために」は、自分の意志や努力によって実現できる目標に使います。
例文
* 日本へ行くために、お金をためています。
* 医者になるために勉強しています。
* JLPT N1に合格するために毎日勉強しています。
* 家を買うために働いています。
これらの例に共通しているのは、
**本人が行動することで達成できる目標**
であることです。
学習者には、「ために」はゴールに向かって自分が頑張るイメージです。と説明すると理解しやすくなります。
「ように」の使い方
一方、「ように」は能力や状態の変化を表します。
例文
* 日本語が話せるように勉強しています。
* 漢字が読めるように練習しています。
* 忘れないようにメモします。
* 早く起きられるようにアラームをセットしました。
ここで注目したいのは、
* 話せる
* 読める
* 起きられる
などの可能形です。
能力が身につくことや、ある状態になることを目標にするときは「ように」を使います。
一番簡単な見分け方
授業では細かい文法説明よりも、まずシンプルなルールを教える方が効果的です。
新人教師の方には、まず次のように説明することをおすすめします。
「できる」があるなら「ように」
* 話せるように
* 読めるように
* 書けるように
* 聞き取れるように
普通の動詞なら「ために」
* 行くために
* 買うために
* 合格するために
* 結婚するために
もちろん例外はありますが、初級学習者にはまずこのルールだけでも十分役立ちます。
学習者がよく間違える例
× 日本語が話せるために勉強しています。
文法的に絶対に間違いというわけではありませんが、とても不自然です。
自然な日本語は、
○ 日本語が話せるように勉強しています。
です。
なぜなら、「話せる」は能力だからです。
× 漢字が読めるために毎日練習しています。
これも不自然です。
○ 漢字が読めるように毎日練習しています。
が自然です。
○ 日本へ行くためにお金をためています。
これは自然です。
「行く」は意志的な行動だからです。
「ように」は自分でコントロールできないことにも使う
実は「ように」は能力だけではありません。
自分の意志だけでは完全にコントロールできないことにも使います。
例文
* 遅れないように早く出発します。
* 忘れないようにメモします。
* 風邪をひかないように気をつけます。
「忘れる」「風邪をひく」などは、自分の意志だけで100%コントロールできるわけではありません。
そのため「ように」が使われます。
学習者への説明は難しくしない
新人教師がよくやってしまうのが、最初から難しい文法用語を使うことです。
例えば、「意志動詞と無意志動詞の違いです。」と言っても、初級学習者にはほとんど伝わりません。
それよりも、
- 「自分が頑張ればできる目標は『ために』です。」
- 「能力がつくことや状態が変わることは『ように』です。」
と説明した方がずっとわかりやすいです。
実際の授業で使える会話例
先生: 日本語を勉強する目的は何ですか。
学習者:日本語が上手になるために勉強しています。
先生:意味はわかります。でも自然な日本語なら「上手になるように勉強しています」の方がいいですよ。
学習者: どうしてですか。
先生:「上手になる」は能力が伸びることですよね。能力がつくときは「ように」を使います。
学習者: じゃあ「日本へ行くようにお金をためています」はどうですか。
先生: その場合は「日本へ行くためにお金をためています」が自然です。日本へ行くことは自分の目標だからです。
このように具体例を使うと、学習者は理解しやすくなります。
新人教師が覚えておきたいポイント
授業で学習者が迷ったら、まず次の二つを確認しましょう。
① 能力が身につく話か?
* 話せる
* 読める
* 書ける
* 聞き取れる
→ 「ように」
② 自分が目指す目標か?
* 行く
* 合格する
* 買う
* 結婚する
→ 「ために」
この判断だけで、多くの文は正しく使い分けられます。
まとめ
「ように」と「ために」は、どちらも目的を表す文法ですが、使い方には大きな違いがあります。
「ために」→ 自分の意志や努力で達成できる目標
「ように」→ 能力の向上や状態の変化、自分だけでは完全にコントロールできないこと
新人教師のうちは、まず
「できる・話せる・読める → ように」
「行く・買う・合格する → ために」
というシンプルなルールで教えるのがおすすめです。
学習者は難しい文法理論よりも、実際に使えるルールを求めています。
まずはわかりやすく伝え、たくさんの例文に触れてもらうことが、「ように」と「ために」を自然に使い分けられるようになる近道です。

コメント