日本語教師になって間もないころ、多くの人が頭を抱える文法があります。
それが「は」と「が」です。
学習者から、
先生、「私は学生です」と「私が学生です」は何が違いますか?
と聞かれたとき、自信を持って答えられるでしょうか。
実は、日本語教師歴が長い先生でも、「は」と「が」の説明は難しいと感じています。
なぜなら、日本人は普段ほとんど意識せずに使い分けているからです。
今回は、新人教師向けに「は」と「が」をどう教えればいいのか、そして学習者にはどのように説明すればいいのかを紹介します。
新人教師がやりがちな失敗
初めて教えるとき、多くの教師は文法書の説明をそのまま使います。
例えば、
「は」は主題です。
「が」は主語です。
という説明です。
もちろん文法的には間違っていません。
しかし、初級学習者にとっては意味がわかりません。
実際、
主題って何ですか?
と聞かれてしまうこともあります。
その結果、教師も学習者も混乱してしまいます。
まずは「話題」と考える
私は新人教師に、
「は」は話題を出すマーカー
と考えるように伝えています。
例えば、
私は日本人です。
この文は、
「私について話します」
という意味です。
つまり、
私について言うと、日本人です。
というイメージです。
「が」は新しい情報
一方、
私が日本人です。
は少し意味が変わります。
これは
日本人なのは私です。
という意味になります。
つまり、「誰が?」という質問への答えです。
学習者への説明
授業では難しい言葉を使わずに説明した方が伝わります。
例えばこうです。
先生:
「は」はトピックです。
学習者:
トピック?
先生:
「これからこの人の話をします」というマークです。
学習者:
ああ、なるほど。
先生:
「私は学生です」は、「私について話します。私は学生です」という意味です。
「が」はどう説明する?
先生:
「が」は特別な情報を言うときに使います。
例えば、
A:
だれが先生ですか。
B:
私が先生です。
ここでは「私」が答えなので、「が」を使います。
実際の会話で見てみよう
パターン①
A:
あなたは何をしていますか。
B:
私は日本語教師です。
自然です。
なぜなら、「私」について話しているからです。
パターン②
A:
この中で日本語教師はだれですか。
B:
私が日本語教師です。
自然です。
「だれですか」の答えだからです。
学習者がよく間違える例
例えば、
だれが来ましたか。
という質問に対して、
私は来ました。
と答える学習者がいます。
意味は通じます。
でも自然なのは、
私が来ました。
です。
なぜなら、「だれが」という質問への答えだからです。
授業でそのまま使える説明
私は初級クラスでこんなふうに説明しています。
「は」は話のテーマです。
「~について話します」というイメージです。
そして、
「が」は『だれ?』『なに?』の答えです。
と教えます。
すると学習者はかなり理解しやすくなります。
教師と学習者の会話例
学習者:
先生、「私は学生です」と「私が学生です」は同じですか。
先生:
似ていますが、少し違います。
学習者:
どう違いますか。
先生:
「私は学生です」は、私について話しています。
学習者:
はい。
先生:
「私が学生です」は、「学生なのは私です」という意味です。
学習者:
ああ、「だれが?」の答えですね。
先生:
そうです!
この瞬間、学習者の理解が一気に進みます。
新人教師が覚えておきたいこと
「は」と「が」を最初から完璧に説明しようとしなくて大丈夫です。
上級レベルになると、
- 対比の「は」
- 総記の「が」
- 排他の「が」
などさらに細かい説明があります。
しかし初級ではそこまで必要ありません。
まずは、
「は」
→ この人・この物について話します
「が」
→ 「だれ?」「なに?」の答え
これだけで十分です。
まとめ
「は」と「が」は、日本語教師にとって永遠のテーマと言われるほど難しい文法です。
だからこそ、新人教師は難しい文法用語を並べるよりも、
「は」は話題
「が」は答え
というシンプルな説明から始めるのがおすすめです。
学習者は言語学者ではありません。
複雑な理論よりも、
「いつ使うのか」
が分かる方がずっと大切です。
授業で迷ったときは、
「これは話題ですか?」
「それとも『だれが?』の答えですか?」
と考えてみてください。
それだけで、「は」と「が」の説明はぐっと分かりやすくなります。

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